テーマ: 「PMをもっと広い視野から眺めて人生100年に活かすには」
~多様なPM手法を活用して、生涯にわたるキャリアとライフデザインを構築しよう~
・・・ 田島 彰二 (戦略PMオフィス 代表)
<発表資料>
<田島さん講話> 文責:岩下
あるとき「ITコーディネーターのキャリア・未来設計について説明してほしい」と頼まれました。それがきっかけで、オンライン教育に関わることになり、キャリア開発や関連する話をする機会も増えてきました。
今日はPMの話を中心にしますが、ビジネスに関しても重要な話です。例えば、ビジネスアナリシスの標準というものがあり、PMBOKと同様に、BABOKという知識体系が存在し、さまざまな方法論が定められています。また、IT業界のコーディネーターについても触れます。
ITコーディネーターという資格が約20年前に導入され、ITベンダーと企業との間をつなぐ役割を果たしています。これは経済産業省が推進していた資格で、私もその資格を取得しました。取得後に周りから「お前のやっている仕事はPMの方が向いている」と言われ、PMの資格を取ることになりました。
プロジェクトマネジメント(PM)を続けていたら、PMI Japanでの取りまとめ役を務めることになりました。その後、PMI Japanの日本代表としてISO 21500の作業を担当することになり、ISOの関連で田中弘元理事長ともお話をする機会が増えました。
PMI JAPANの活動を通じて、PMの知識を深めるとともに、各種の業界でPMBOKに携わることとなり、その後PMAJにも参加しました。最近では、IPA(情報処理推進機構)やデジタルスキル標準などの資料を読む必要が出てきて、さらに理論的な背景を学びたくなりました。会社で教えるべき経営理論について学ぶことを決心し、ちょうどその時に入山先生が良い本を出版されていたので、それを真剣に読んでいます。今日は、そのような経緯を踏まえて、いくつかの話をしようと思っています。
大学時代は、電子情報通信学会などでアルゴリズムに関する研究をしていました。その後、NECに入社し、NTTの研究所とも連携しながら新しい仕事に取り組みました。また、ニューメディアや通信関連の仕事にも関わり、NECがサービス業に進出する際に、会社の定款改定なども担当しました。
その後、PMやPGM(プログラムマネジメント)、PFM(ポートフォリオマネジメント)の仕事を手掛けるようになり、ビッグローブ(BIGLOBE)を立ち上げて海外にも展開しました。資格も取得し、40年ほど会社に勤めた後、独立して個人事務所を立ち上げました。その後、ポートフォリオプログラム研究会でプレゼンテーションを行い、他の組織でも活動するようになりました。
その途中で、富士通などでPMIの立場で説明をしているとき、参加者から「自分の金で仕事をしたことはありますか?」と尋ねられました。この質問に驚き、会社のお金ではなく、自分で事業を立ち上げて責任を持って仕事をするべきだと考えました。そこで、ポートフォリオプログラム研究会の仲間と一緒に有限責任事業組合(LLP)を立ち上げました。名刺交換をする中で、LLPという形態が海外で一般的であることを知り、実際に自分たちでもこの組織形態を採用し、成功を収めました。数年後、そのLLPをカンパニーに改組し、正式に法人化しました。
千葉のNPO法人にも所属し、地域での活動を行いながら、個人事業主として共同事業体の仕事にも取り組んできました。また、東京都の委託事業に携わり、テレワーク推進やデジタル推進、セキュリティ推進などのプロジェクトにも関わっています。
これまでの経歴を振り返ると、「DDX」というネットワーク構築からスタートし、一部上場企業の定款を変更して日本初のEDIセンターを設立しました。また、ビッグローブの立ち上げや海外展開も手掛け、その経験を活かして海外で新たな事業を立ち上げました。
特に、中国やロシアでのインターネットネットワークの構築では、現地からの依頼を受けて、全土に広がるネットワークを構築しました。現在では状況が変わっていますが、当時は必要とされるインフラを提供できたことに意義を感じています。そのほか、台湾をはじめとする地域のインターネット立ち上げにも関与し、プロジェクト全体の取りまとめを担いました。また、イギリスのアクセロス(Axelos)でPMに関わる仕事をしたり、PMIの活動を手伝ったりしています。少し自己紹介が長かったかもしれませんね。ただ、キャリアと本日のテーマが関係しているのでその紹介兼ねて説明したつもりです。
今日お話ししたいのは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれるテーマについてです。大企業の方々とは、PMの話は比較的スムーズに通じますが、中小企業の方々と話す場合、システムやPMの話題がほとんど通じないこともあります。そのため、ITコーディネーターのようにビジネス全体の話をする必要があります。
私の本職は新技術や新しいビジネスの立ち上げが中心です。
問題意識を持つことが大切で、何か課題を認識して、それを解決するためにいくつかの障害や壁を乗り越える手助けをしてきました。自分自身でもいろいろな経験をしてきたので、それが仕事において重要だと感じています。
特許の話に触れると、会社を辞める直前の2010年ごろ、最後の特許を出しました。たとえば、私の特許一覧を見ると、1986年から2000年代にかけていくつかの特許が並んでおり、最後の特許はロシアでISP(インターネットサービスプロバイダー)を立ち上げる際のものです。
会社では、古いことから新しいことまで、いろいろな仕事に取り組みました。細かい部分から全体を見渡す仕事まで、幅広く経験できたことはよかったと思います。また、お客様とも頻繁に関わることができたのも大きな財産です。
本日は、P2MやPMの話については、あまり触れません。本日の皆さんはその専門家だからです。
それ以外にも、組織やビジネスに関する知識を持っていることは非常に役立ちます。そして、それらを支える標準として、ISOやイノベーションに関する標準、さらにはデジタルスキル標準などがあります。
このデジタルスキル標準は、3年ほど前にIPAから発表されました。この標準を取り入れることで、プロジェクトがよりスムーズに進む方法論が提示されています。こういった標準や知識を知っておくことは大切です。
さらに、それを支える理論が存在します。しかし、この理論を体系的に教えてくれる人は少なく、本来は、質問されたときに単なる計算や手法だけでなく、自分自身でその理論の細部まで説明できることが理想です。理論を理解することで、納得感が高まります。
必要であれば、一つの理論について3~4本の論文を参照することも推奨されます。その結果、概念的な論から実務的な論、単純な論から複雑な論まで幅広い理論体系を理解できるようになります。
たとえば、ISOだけを取り扱う人々だけではなく、イギリス系のスタンダードのように、具体的な企業名やコスト削減率まで示したものもあります。こういったスタンダードは、非常に実務的な情報を含んでおり、実際のビジネス現場でも活用しやすいものです。
PMIの標準や、ヨーロッパ版のIPMA、それにドイツやイギリスなど国ごとの基準について、全体像を理解しておくことが重要です。ただし、それを無理に深掘りしすぎる必要はありません。これらを社会学、経済学、心理学といった学問の視点から押さえることで、より安定した知識基盤を築けます。
また、必要であれば、標準や基準を支える理論まで遡って学ぶと、自分の理解が深まり安心感が得られるでしょう。そのためには、例えば入山先生の本などを一通り読んでおくことをお勧めします。理論の概要を知り、納得感を得ることで、より効率的に学べます。
もし経済学や社会学、心理学などを専門にしている方がいれば、それを活かして学ぶのが良いでしょう。専門外の方でも、それらの学問に触れてみることで、プロジェクトマネジメントへの理解が深まるはずです。
少し具体的な話をすると、アイデアが浮かんだときには社内でいろいろ挑戦しました。ただ、その過程では必ずと言っていいほど反対する人が出てきて、「なんでそんなことをやっているんだ」と言われることもありました。
そんな反対意見は気にせず、自分で権限を手に入れ、影で仕事を進められるようになると、アイデアをしっかり製品化まで持っていける経験を積むことができます。私は、会社に入ってすぐから、こうしたことに取り組んできました。こうした挑戦ができると、会社での生活も楽しくなります。皆さんも頑張って、いろいろ考えてみたらどうでしょうか。
「人生100年時代は会社だけが全てじゃない」という考え方を広めた、イギリスの女性研究者が書いた『ライフシフト』や『ワークシフト』といった本があります。これらの本では、人生設計を再考する重要性が提案されています。特に「教育を受け、働き、引退する」という従来の三段階の生き方に代わり、もっと柔軟に頭を使って設計し直す必要があると述べられています。
私自身も、この考え方に共感し、人に教えることやコンサルティングを通じて、毎年新しいことを取り入れるように心がけています。同じことを繰り返さず、新しい学びや挑戦を重ねることで、人生の中で新しい発見や可能性が広がると実感しています。
PMの文献を読んでいると、これらの考え方に通じる部分が多くあります。「あれはこれを指しているのでは?」と気づくことが増え、自分自身の人生設計やデザインの再構築に役立っています。こうした本や考え方は世界でも多くの支持を集めています。
私たちも、自分の人生設計を見直す機会を大切にし、柔軟に対応していくことが重要だと思います。
IIBA(International Institute of Business Analysis)のストラテジーやビジネスデータアナリティクスガイド、データ分析の方法、さらにビジネスアナリシスの基礎である「ビジネスアナリシス ボディ・オブ・ノレッジ(BABOK)」を学ぶことはとても重要です。プロジェクトマネジメントについてもさまざまな知識を得る機会がありますが、実際に製品に関連した応用的な経験を積むことは少ないのが現状です。
以前の会社で経験したことも、プロジェクトを通じて完成する製品やサービスにたどり着くプロセスが中心で、「プロダクトとは何か」という一歩踏み込んだ学びが不足していると感じました。そのため、無料でダウンロードできるリソースを活用して、「プロダクトをどう扱うか」を勉強するのは非常に有益だと思います。
また、「プロダクトオーナー」や「製品計画者」に必要な知識やルールが書かれた資料もあり、これを活用しながらマーケティングの知識を深めることが推奨されます。それらを読んで興味を持ったら、さらに質問をしたり、他の人に紹介したりすることで、その知識が具体的な行動に結びついていきます。
最終的には、製品をどう購入していただけるか、使用してもらい、そして発展させるかを学ぶことが重要です。このような知識は、日本で製品を開発し、ビジネスを動かす際の基本的な考え方として非常に役立ちます。そのため、私はこれらの学びを継続して深めていきたいと思っています。
YouTubeには、ビジネスアナリシス(BA)について日本語で説明している動画が多く公開されており、無料で視聴できます。ぜひ一度見てみることをお勧めします。
以前、ITコーディネーターの資格を取得した後にPMの資格も取りましたが、ITコーディネーター協会が今年、少し古くなったプロセスガイドラインを最新版の「4.0」に改訂しました。このガイドラインは、世界中の良いところを取り入れて日本の組織に適用する内容となっており、無料でダウンロード可能です。ぜひ目を通してみてください。
以前のバージョンでは、PM的な観点から、ビジネスアナリシス(BA)をPPP(ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト)に展開して説明することができました。
今回の新バージョンでは、さらにビジネス寄りの視点や学習方法(例えばPMD、PMCDFなど)、さらにはセキュリティ関連の内容も含めて解説されています。このように、最新版のITコーディネーターのガイドラインには多くの有益な情報が含まれていますので、まずは無料でダウンロードして読んでみて、参考になりそうであれば活用してみると良いでしょう。
ITコーディネーター協会では、毎年さまざまな研究成果を発表しています。その一環として、「ITコーディネーター千葉経営応援隊」というグループで1年間取り組んだ研究成果を発表しています。私はリーダーとして、この活動をまとめてきました。たとえば、昨年はセキュリティに関するテーマを扱いました。このような研究内容は公開されており、みなさんに読んでいただくこともできます。
また、IPA(情報処理推進機構)が策定した「デジタルスキル標準」も重要です。この標準は、わずか2〜3年でバージョン1.2まで進化し、AIを含むさまざまな要素を網羅しています。仕事を進める際には、「ビジネスアーキテクト」「デザイナー」「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」などの立場を持つ人々がチームを組むことが求められます。この標準には、それぞれの役割に必要なスキルや知識、優先順位について詳しく説明されています。
さらに、IPAの資料には、どのような項目を学ぶべきかが書かれており、必要な知識を段階的に学べる構成になっています。たとえば、「PMBOKガイド」第7版やIIBA(ビジネスアナリシスの国際標準)といった具体的なリソースも参考に挙げられています。これらは、職場や組織の教育に活用することで、スキルアップにつながるでしょう。
全体として、ITやDXに関する知識を深めるための資料や指針が豊富に提供されています。これらを活用し、社内教育や自己研鑽に役立てていくことが重要だと考えます。
経営理論にはいくつかの基本的な考え方があり、それらを理解することはとても重要です。私自身は経営の専門家ではありませんが、経済学に基づく理論を紹介しています。例えば、7つの主要な理論があり、それぞれに3つから4つの基本的な原理が説明されています。これらの理論は、何ページかにわたって詳しく解説されています。リファレンスがいくつか含まれているため、全体を理解するには1週間から10日くらいかかるかもしれません。
電子ブックも利用できるので、手軽に購入して読めます。経済学を学んだことがない人でも理解できる内容です。さらに、この理論から派生する多くの考え方が登場し、それらは社会学や経済学とも密接に関連しています。
社会学の理論においては、人間の心理学が基礎にあり、それが社会や経済にどう影響するかが解説されています。経済や社会の動きがどのように成り立っているのかを理解するためには、人間の本質を知ることが重要です。
これらの理論は最新の研究成果にも基づいており、興味のある方はぜひ読んでみると良いでしょう。私は暇な時に一つ一つ読んでいると、それらが次第に繋がり、理解が深まっていくのを感じています。
これまでの経験を振り返ると、私自身が関わったプロジェクトは約20個ほどありました。その中で、PM(プロジェクトマネージメント)のノウハウを活用し、現場で実践してきたことが多くあります。当時はPMやITコーディネーターの知識がなく、もしその知識を持っていたら、もっと効率的に進められたことが分かります。
市場分析や組織の連携などをうまく進めるための理論を知っていれば、さらに効果的に成果を上げられたかもしれません。その知識があれば、役員の前で理論的な説明をもっと自信を持ってできたはずです。たとえば、「リアルオプション理論」や心理学に基づいた戦略的なアプローチを駆使して、プロジェクトを進めたと言えたでしょう。
プロジェクトの進行中に、理論通りにはいかないこともありました。というのも、実際には人間や組織の行動が計画とズレることがあるからです。こうしたズレを考慮すると、事前に準備しておくべきことがもっとあったと反省しています。
自分が関わった各プロジェクトでの経験が、人生にどうプラスまたはマイナスに作用したか、何を学んだかを整理しています。PMIの現在の会長である端山(はやま)さんが、私が伝えたPMの経験を整理してくれました。それによると、日本ではプログラムマネジメントの理論が異なる部分が多く、現場で実践してみると、理論を知った上で動かすことでうまくいった部分もありますが、逆に上手くいかなかった部分もありました。その反省として、次回はもっと広い視野を持ち、計画的に考え、ダイナミックに動けるようにしたいと思っています。
新しい事業を立ち上げる際には、予測が甘かったと感じたこともあります。もっと有用な情報を事前に知っていれば、もっと上手く進められたかもしれません。さらに、他のプロジェクトや国にも適用できたかもしれませんが、最後にはその段階に至らなかったこともあります。もっと早く知識を持っていれば、いろいろな課題を解決できたことがあったと反省しています。ITコーディネーターやPMの仕事、情報ビジネスのコンサルティングなど、さまざまな実務経験を通して学び、日々新しいことに挑戦しながら過ごしています。
プロジェクトマネジメントにおいては、ただ単に決められた標準(スタンダード)を説明するだけではなく、そのバックグラウンドや歴史を理解して適用することが重要です。PMIのOPM(組織運営マネジメント)の中には、18個の項目が推奨されていますが、さらに一歩踏み込んで、仕事をプラスにできる方法があると感じています。
現在、PMIのポートフォリオ・マネジメント、プログラム・マネジメントの最新バージョンを説明する資料を作成しています。これをYouTubeにアップしていて、現在約23人の方が「いいね」を押してくれています。もし興味があれば、ぜひ見ていただき、いいねを押してもらえると嬉しいです。私たちは共同事業会社を設立しており、その取り組みについても紹介しています。質問があれば、私のウェブサイトや連絡先を通じて対応しますので、どうぞ気軽に問い合わせてください。
<議論概要>
・(事務局)お話はスムーズで、通常の半分の時間で終わりましたが、内容は非常に広範で、自分がいかに限られた世界で生きていたかを実感させられました。大きな話だったと思います。まだ消化しきれない部分もありますので、皆さんから質問をいただき、さらに深掘りできればと思います。どなたか質問やご意見はありますか?
・(参加者)お話を聞いて、すごい方だと改めて感じました。その幅広さ、深さに感銘を受けました。実務的な概念や単純/複雑な内容もあり、素晴らしいと思いました。心理学や経営学、経済学、社会学など、広範囲にわたっていて、本当に素晴らしいと思います。説明する際、自分の経験だけでなく、理論的な体系を背景にして説明できるのが大切だと感じました。
⇒(田島さん)最近、東京都の仕事に関わる中で、若い人たちと接する機会が増えています。彼らから直接、新しい分野や未経験の領域について質問を受けることが多く、それがとても面白いんです。そのような場面では、自分の知識の幅を広げようと真剣に取り組んでいます。
また、中小企業、特に社員が5~10人程度の小規模な会社で話をする際には、より具体的でビビッドな説明が求められます。そうした説明ができるように、日々研究を重ねています。大企業に向けた広い視点での話はこれまで何十年もしてきましたが、実際にはなかなか素直に聞き入れてもらえないことも多いです。一方で、小さな企業に関わると、その変化がすぐに目に見えるため、とても面白いと感じています。
・いただいた資料やフレームワーク、知識体系が完全にリンクしていない状態です。これほどたくさんのものがあるのだということを知り、自分の視野が狭かったことを実感しました。後ほど資料を共有いただけるとのことなので、それをもとに自分なりに調べ、今自分が求めているものについて学んでみたいと思います。
⇒今日ご説明した内容についてですが、ほとんどのものは検索すれば情報が見つかるものばかりです。ただ、英語の資料のみの場合もあり、斜め読みする必要があるかもしれません。それでも、決して変なものではないことは確かです。
・非常に幅広い知識をお持ちで、さすがだなと感心しました。私自身はまだまだ勉強不足で、ついていけないと感じる部分もありました。誰かに何かをしたいと思った時、何をどうすればいいのかを考えるには、多くの知識や経験が必要だと思います。その中で、さまざまな「引き出し」を持っているだけでなく、問題の本質を感じ取る鋭い嗅覚や直感が非常に優れていると感じました。この力がプロジェクトマネジメントやプログラム運営などのお仕事に活かされているのだと思います。
学び続けることで新しい視野が広がっていくのだと改めて感じました。ありがとうございました。
⇒以前、ISOの会議で田中元理事長に「田島さんはPMIをもっと推進するのかと思っていたけれど、意外とニュートラルですね」と言われたことがありました。そういう意味では、私は特定の方向に偏っていないと思います。
当時から、自分の興味のあることを中心に、普通のことを着実に進めてきたつもりです。興味がある分野を追いかけるうちに、関心の範囲がどんどん広がっていきました。自分のペースで進めてきた結果、視野も徐々に広がってきたと思います。ただ、まだ道半ばではありますが。そんな感じです。
・今後についてお伺いします。田島さんのお話では、上流から下流まで、さらには経済学や心理学といった幅広い分野にわたり、ニュートラルにアプローチされていると感じました。将来的に「田島流統合理論」のような形で、全体をまとめるようなことは考えていますか?
⇒いえ、私自身控えめな性格なので、飲みの席では話せても、皆さんの前でそんな壮大なことを語るほどの度胸はありません。もっと言うと、実際の場面ではケースバイケースが非常に多いということを強く感じています。だからこそ、一つの大きな理論やビジネスフレームワークとして全てをまとめるのは難しいのではないかと思います。
むしろ重要なのは、個々の状況でどう活用するか、どう分析するかを考えることです。多くのビジネスフレームワークやスタンダードといったものも、ある特定の局面を捉えたものに過ぎないのです。
その意味で、私は今もPMIの様々なスタンダードの一部を手伝ったり、先ほどお話ししたアクセシビリティ関連の取り組みにも関わったりしています。そうした知識やツールをできる限り生かしながらも、「日本ではどう活用できるのか」という視点を持って取り組んでいます。
P2Mの第4版が完成しましたが、こういうことを言うのは恐縮ですが、新しい基準やフレームワークは作ったそばから陳腐化していきます。特に、業界ごとの進化や変化が速い中で、AIの発展がそれをさらに加速させています。
例えば、P2Mがどれくらい広く認知されているのか、AIを活用して調査してみるのは有意義だと思います。AIのGeminiやその他のモデルを使えば、どの程度P2Mが有効性を認められているのか、またどれくらいの影響力を持っているのかを把握できます。
私自身、プレゼン資料を作る際に、PMやITコーディネーターといったフレームワークがAIにどの程度認知されているかを比較することがあります。その過程で、「これくらい広がっているのか」「まだ日本語では浸透していないが、英語ではこうなのか」といった知見を得ることができます。このような調査をすることで、自分がどこまで情報を広げていくべきか、方向性が明確になると思います。
・例えばP2Mの第4版が出たばかりですが、第5版に向けて何かアドバイスや貢献を頂ける可能性はありますか?
⇒いや、PMIでも同じことを聞かれることがありますが、新しいバージョンが出た直後に次のバージョンの話をされるのは少し困りますね。それぞれの分野で、専門家が楽しみながら独自の取り組みを進めるのが良いのではないかと考えています。アメリカのPMIはAIにかなり力を入れています。日本も負けていられない状況だと感じています。
・(事務局)今日はスケールが少し大きすぎたようで、どのようにコメントすればいいか迷われている方が多いようです。いくつかポイントを絞って複数回に分けて、改めてお話を頂くのも良いのではないかと思います。
少し早めの終了となりますが、意見が出なくなったら終了というルールですので、本日はこれで終わりといたします。
貴重なお話をありがとうございました。
<注>
資料は改訂される可能性がありますのでご了承ください。