「第1回Project SE懇談会」-2024/07/25


テーマ:「ビジネスを駆動するプロジェクトマネージャにとってのシステムズエンジニアリング」

       ~Project Systems Engineering (Project-SE)~

     ・・・ 佐藤 健司 (三菱プレシジョン株式会社)

     https://www.pmaj.or.jp/p2m/seminar/p2mclub/202458.html

 

プロジェクトは、その複雑さと境界の曖昧さによって成功の不確実性が増す中、新しいプラットフォームを活用した革新的なイノベーションによって、業界の地図が大きく塗り替えられてきています。また、多様な技術領域が交錯する中、これまでの画一的な取り組みではプロジェクトの成功を収めることがますます難しくなっています。こうした状況下で革新的なビジネスモデルを実現し、企業の成長をリードするためには、既存の安全領域から飛び出し、日々挑戦と成長を目指す人材が欠かせません。

 今回、システムズエンジニアリングの知識を駆使し、プロジェクトマネジメントの最前線で活躍するビジネスドライバーとなる人材の育成についての課題と解決策について探り、皆さまと議論できればと考えております。

 

(Agenda)

第一部 ビジネスモデル

・ビジネスモデルを生み出す

・ビジネスモデルに成功をもたらす

・ビジネスモデルを駆動する

 


<事前配布資料:最終版> by佐藤さん

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ビジネスを駆動するプロジェクトマネージャにとってのシステムズエンジニアリング<最
PDFファイル 5.8 MB

 

<佐藤さん講話内容>

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第58回P2Mクラブ_ビジネスを駆動するプロジェクトマネージャにとってのシステム
PDFファイル 4.6 MB

    ノート形式で、<講話内容>が記述されています

 


 

<質疑内容>

 

 後半のフリーディスカッション内容が再現されています                          文責:岩下 

 

・佐藤さんのお話はいつも大変興味深いです。表紙に示されているように、ポストイットを使って、いろいろな概念の構成を自分で確認・整理しながら資料を作成していただいているので、ついつい聞き惚れてしまいます。皆さんからもいろいろなご意見やご感想があると思いますので、どなたでも結構です、ぜひご意見をお聞かせ下さい。

 

・まず全般的な点について感謝と感想を述べさせていただきます。

1 番目、システムズエンジニアリングを理解するという私の本日の出席の目的は十分に満たされましたことに感謝します。

2 番目として、佐藤さんは、マンマシンシステムの最高峰であるウォーゲームという防衛システムの分野で SE として活躍されてきた経験から、システム理論をシステムズエンジニアリングの形で解説されました。しかし、私が違和感を覚えるのは、米国では防衛や NASA のためにシステムズエンジニアリングが生まれましたが、一方で社会や企業内の競争力を獲得するためにシステムズダイナミクスが発展してきたという点です。

 

 私はヨーロッパで教えたり研修を行ったりしていますが、システムズエンジニアリングは非常に難解で、非エンジニアには理解が難しいと感じています。ヨーロッパではシステム理論の教育が非常に盛んで、ハードシステムを対象とするシステムズエンジニアリングに対して、ソフトシステムズメソドロジー(SSM)が発展してきました。これを認識しないと、今日のお話を理解するのが難しい人もいるかと思います。

 

 3 番目に、現在のプロジェクトマネジメントにおいては、計画通りにプロジェクトを完了させることよりも、いかにイノベーティブで価値の高いプロジェクトを作るかが重要です。先進国の経済の70%はサービスエコノミーであり、システムズエンジニアリングだけでは語れない問題も多く、システム理論やシステムダイナミクスが必要とされています。

 

 システムズエンジニアリングの伝道として、システム理論の根幹を理解し、プロジェクトをシステムとして捉え、そのパフォーマンスを支配するアクティビティやクリティカルパスを理解することが重要です。ダニエラ・メドウズの「世界はシステムで動く」という本を紹介されましたが、システム理論やシステムダイナミクスの重要性を強調したいと思います。お話はシステム理論を理解している人には非常に有益ですが、一般には難しいかもしれません。これが私の正直な感想です。

 

⇒ありがとうございます。貴重なご意見をいただき、感謝しています。システム理論やエンジニアリングについて、用語の使い分けが不十分だったことを反省しております。また、難しい表現を使ってしまったこともあり、申し訳ありませんでした。

システム理論やソフトシステムメソドロジーの重要性については、同じ認識ですが、今回はそれを十分に共有できなかったと感じています。

 

・P2M のプログラムマネジメントについて、システム理論から非常に分かりやすく解説した図がIEEE にあります。私はそれを見つけて、研修に使ったことがあります。システム理論の基礎がない人でも非常に分かりやすいものです。

今日のお話しの多くをオントロジーの観点から、プログラムマネジメントとは何かを一枚の図で綺麗に説明してくれます。これをシェアしますので、参考にしてください。その図は非常に理解しやすいと思います。

 

・今回のテーマを佐藤さんにお願いしたのは、先ほどのお話にありましたように「システムズエンジニアリングがプログラムを言語化する」という点についてです。私たちがプロジェクトを議論する際に、十分に言語化できているかどうかという課題があります。経験に頼りがちで、アートとサイエンスのバランスが取れていないと感じています。特に、SE の部分が不足しているのではないかという問題意識があります。

 

 佐藤さんは、これまでもそのバランスをうまく取ってくれていました。そこで、佐藤さんの知見を次の若い世代に伝えたいと思い、今回のお話をお願い致しました。佐藤さんのような人材を 10 名程度育成することが最大の目的です。

今回の話は 1 回限りではなく、今後 2 ヶ月おきにシリーズとして講座を開き、皆さんの意見を聞きながら、PM (プロジェクトマネジメント)の言語化を SE の知見を借りて補強していくことが重要だと考えています。その第 1 回目としてお話し頂きました。今後もシリーズで議論を続けていきたいと思っていますので、ぜひ参加いただきたいです。

 

・ヨーロッパでは「P2M は、まさにシステムズエンジニアリングベースのプロジェクトマネージメントガイドだね」と言われたことがあります。これは JAXA のチーフエンジニアであり、PM シンポのキーノートスピーカーをお願いした向井さんも全く同じことを言っていました。

例えば、ミッションエンジニアリングについては、NASA の SE ガイドなどにも記載されていますし、アーキテクチャについても同様に重要視されています。ヨーロッパのシステムズエンジニアリングやシステム理論をよく知っている人たちは、このような考え方を持っているのだと思います。

 

⇒今後の勉強会についてですが、まずは、システムエンジニアリングの概要を共有します。例えば、システムの基本的な概念やプロセスについて、IEEE1220 のプロセスなどの資料を元に勉強します。特に、要求分析、機能分析、設計、統合といったプロセスが重要です。要求の構造については、REBoK なども参考にします。

また、システムズエンジニアリングのツールとして、ファンクショナルフローブロックダイアグラムなども紹介しています。これは、システムの機能を段階的に詳細化するための手法です。サービスモデルの例を用いて、システムの各要素がどのように連鎖しているかも説明します。

オントロジーについては、モデリングとシミュレーションの観点から解説しています。オントロジーを開発する方法やモデルの検証方法についても触れています。

設計プロセスにおいては、設計の構造マトリックスを用いて、プロセスを構造化し、無駄を避ける方法を紹介します。

これらの資料の作成には約 2 ヶ月かかりましたが、皆さんのご意見を反映させながら、関心のある部分にフォーカスして紹介していく予定です。

 

・このように資料を準備していただいていますが、これを分割しながら、皆さんのご意見を伺いながら、関心のあるところにフォーカスして議論していきたいと思っています。

 プロジェクトの分野や現場において、システムズエンジニアリングの知見がどのように受け止められているのか、もしくは知らないまま過ごしているのかを議論します。分野や出身母体が異なるため、それぞれの解釈も違うと思いますが、これを議論し、プロジェクトマネジメントにシステムズエンジニアリングがどのように反映されているかを整理します。

 最終的には、システムズエンジニアリングの知見を生かした説得力のある説明ができるように、ガイドブックとしてまとめることを目指しています。この勉強会は、誰でも参加できて、自由に議論できる場にしたいと考えています。

 

 現実の事例と理論を組み合わせて説明することで、より理解しやすくなると思います。システムズエンジニアリングの知識をプロジェクトマネジメントにどう反映させるかについても議論し、各分野の解釈を整理したいと考えています。

 皆さんからのフィードバックを大切にしながら、若い世代に向けた PM や SE の講座に役立つ内容を目指していきたいと思います。ご意見があれば、ぜひお聞かせください。

 

・非常に幅広く、かつ詳しい説明をしていただきありがとうございました。おかげで、私の中でモヤモヤしていた部分が少し整理され、どの考え方が正しいのか、どこが不足しているのかが少し見えてきました。本当に勉強になりました。

ただ、一般的な説明をする場合、理解が難しい部分があるのではないかと感じました。それぞれの見方がある中で、一つの見方にこだわりすぎると見失ってしまうこともあるので、全体としてバランスを取ることが大切だと思います。特定の視点だけに偏らず、全体のバランスを保つことで、袋小路に陥らないようにすることが重要だと感じました。

 このバランス感覚を持つことで、プロジェクトの進行がスムーズになり、自信を持って取り組むことができるようになると思います。今後も、佐藤さんからのアドバイスを受けながら、自分なりに整理していきたいと思います。本日はありがとうございました。

 

⇒先ほどご指摘をいただきましたように、ものごとを捉えるとき、私も誤った捉え方をしてしまうことがあります。

例 えば、 ハ ン ド ブ ッ ク を 見 ると「 要 求(Requirements)」という言葉には必ず「制約(Constraints)」と「前提(Assumptions)」という言葉がついてきます。要求、制約、前提はいつもペアになっています。ですから、ものごとを考える際、誤解を避けるためには、自分の意見や考えがどの前提に基づいており、その制約の範囲内で成立するのかを明確にする必要があります。制約や前提が異なると見方も変わります。自分の発言や意見がどのようなフレームワークや前提の中で述べられているのかを明確にしないと、誤解を招いたり、意図が伝わらなかったりすることがあります。

 

 今日、いろいろと説明させていただきましたが、その点を皆さんと共有する前提はこうです、この話にはこういう制約があります。その中でこういうことが言えます、としっかり説明できれば、誤解を避けられたのではないかと反省しております。

 

 

・感想をお伝えすると、前半でお話しされていた「ゴールがなければ」という部分が非常に分かりやすかったです。また、確実性と多様性についての話も理解しやすかったです。しかし、最後の部分で多様性を重視すると画一的になりがちだという話が少し分かりにくかったです。

 

 

⇒確実性と多様性についての資料を共有します。左のグラフでは画一性が示され、右のグラフでは多様性が示されています。確実性と多様性は対立するものではなく、同じ尺度上にあるという説明です。多様性を重視し過ぎ、同質性を否定することになると、多様性だけが正しいとする画一的な考え方に陥ってしまうという意味です。

 

・お話全体については、とても共感できました。私は PMR の資格を持っていますが、プログラムマネジメントを考える上で、今日のお話は非常に役に立ちました。ありがとうございました。

 

・他の会議に出ていたため遅れました。本日はありがとうございました。佐藤さんのお話はいつも楽しみです。プロジェクトを進める上でシステムズエンジニアリングが非常に重要だと感じています。実際のプロジェクト進行中に、どのようにシステムズエンジニアリングを活用しているのか、自問することが多いですが、今後も色々と教えていただきたいと思っています。ありがとうございました。

 

・色々と勉強になりました。システムズエンジニアリングのマスタークラスのような内容で、深い領域だと感じました。私は PMP の資格を持っていますが、自己流でシステム思考を取り入れて事業開発を行っています。チームで事業開発を進める際には、プロジェクト憲章がない中で議論を始めることも多いですが、抽象的なものを言語化し、フレームワーク化して進めることが重要です。今日の発表から多くを学びました。

 若手の視点として、少ない経験の中でも学ぶことが多かったです。せっかくの貴重な話を聞ける機会に恵まれましたが、もっと多くの人がいつでも学べるように、動画での配信を検討していただけると嬉しいです。こうした講座の動画を会員限定でパスワード付きで見られるようにしていただけると、さらに学びが広がると思います。今日はありがとうございました。

 

・ご意見ありがとうございます。動画配信については、佐藤さんと相談して対応を考えたいと思います。YouTube の時代ですから、情報発信の方法として検討したいと思います。お仲間や若い部下の方々を誘って次回の参加を促していただけると嬉しいです。引き続きよろしくお願いします。

 

・私はシステムズエンジニアリングにはあまり詳しくないのですが、今日のお話を聞いて、現在取り組んでいるビジネスアーキテクチャの BizBOKと非 常に似て い る と感じ ま し た 。BizBoK はBusiness Architecture Body of Knowledge の略で、

現状分析から課題を見つけ、ソリューションを迅速に実施するというプロセスが、システムズエンジニアリングと非常に似ています。

 ビジネスアーキテクチャとシステムズエンジニアリングの違いについて考えていたのですが、工学系とサービス系の違いかもしれません。私はビジネスアーキテクチャを勉強していて講義もしているので、その違いをもう少し掘り下げてみたいと感じました。

 

・システムズエンジニアリングの理論は、現代のイノベーション系ビジネスマネジメント理論の原型になっていると思います。結局のところ、繋がりを分析し、どこに分断があるのかを見つけるのが重要です。例えば日本の商社がまだ力を持っているのは、ビジネスエコシステムを構築しているからです。

 システムズエンジニアリングの概念をシリーズで深掘りするのも面白いかもしれません。適用事例を語り合うことができればと思います。

 

・ビジネスアーキテクトは、共通の基盤を持つ青写真を作ることが求められます。ビジネスエコシステムのモデル化やプロセス化、見える化が重要です。ビジネスアーキテクチャーは経済産業省も推奨しており、非常に具体的なツールやテクニックが豊富です。これにより、プロジェクトマネージャがすぐに利用できるようになっています。ビジネスアーキテクチャーとシステムエンジニアリングのドッキングや対比を探求することは非常に興味深いと思います。

 

⇒アーキテクチャーフレームワークには、国防総省のDODアーキテクチャフレームワーク (DoDAF)やエンタープライズアーキテクチャー (EA)、ビジネスアナリシスボディオブナレッジ (BABOK)などがあります。

慶應大学のシステムデザインマネジメント研究科の白坂先生は、三菱電機時代に DoDAF のスペシャリストとして活躍されました。システムズエンジニアリングとビジネスアーキテクチャーは非常に密接な関係にあります。

 

・最後に、事務局からお知らせがあります。このお話は今回限りではなく、継続して行う予定です。

「プロジェクト SE 懇談会」というタイトルで、2ヶ月に 1 回程度で開催していきたいと考えています。SE(システムズエンジニア)は概念が広いため、プロジェクトに焦点を当てて進めることが分かりやすいと思います。

これまでの交流会では、「P2M クラブ」として、様々な分野のテーマを広く議論する場と、「夢工学サロン」という、特定テーマで深く議論する二系統で開催してきました。この懇談会も同様に、「プロジェクト SE」という特定テーマに基づいて、深掘りしていく形を目指します。今後の懇談会では、皆さんのご意見やご希望を取り入れながら進めていきたいと思います。

 この懇談会の成果物として、ガイドブックやトレーニングコースの開発などを期待しています。また、参加者がファシリテーターやコンサルタントとして活動できるよう有意義な機会にもなれば良いと思っています。 以上

 

    後半のフリーディスカッション内容が再現されています


<参考資料>by田中さん

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P2M Program Management using IEEE system
PDFファイル 89.8 KB

    P2M のプログラムマネジメントについて、システム理論から分かりやすく解説した図がIEEE にあります

    "Reference Model: Contents Relationship in Program Management adapted after IEEE"

    シェアしますので参考にしてください(田中)

 

<ご提案>(素案)by 事務局

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「プロジェクトSE懇談会」のご提案(素案) (1) (2).pdf
PDFファイル 157.3 KB

    今後も「プロジェクト SE 懇談会」というタイトルで、議論を継続する予定です

    2ヶ月に 1 回程度で開催していきたいと考えています。ご参加をお待ちしています!


<注>

資料は改訂される可能性がありますのでご了承ください。